第585回 ダルマチアへ、ご案内

近々、クロアチアに行きます。クロアチアはクロアチアでも、今回の目的はダルマチアを訪れること。アクセスがまだまだ悪いので、まずは首都ザグレブで二泊ほどして呼吸を整えてから、憧れの彼の地に向かう予定です。

ダルマチアとは、クロアチアのアドリア海沿岸地域一帯のこと。中心都市はスプリト(スプリットとも発音されます)といいう古い歴史を持つ風光明媚なところで、なんとローマ皇帝ディオクレティアヌス(245?~316?高校時代に、世界史で出てきた名前です。この辺りからだんだん人物の名前が覚えられなくなって『世界史』という教科が自分から遠ざかっていったのを覚えています…)の宮殿がそのまま旧市街になったという、珍しい起源を持つ港町です。その他、ダルマチア地方にはシベニク、トロギールといった古都がありますが、いずれもあまり日本では知られていない地名かもしれません。

ダルマチアで一番人気があるのは、なんと言ってもドブロブニクでしょう。「そこも知らな~い!」とおっしゃる前に…ちょっとお待ち下さい!宮崎駿監督のアニメ映画『魔女の宅急便』をご覧になってはいませんか?ここはその舞台(モデル)となった町で、ヒロインの女の子が魔法のほうきにまたがって空を飛んでいたあの風景が、まさにドブロブニクなのです。

“この世で天国を求める者はドゥブロヴニクに行かれよ” と、かのバーナード・ショウが言い残したそうです。 旧市街は全長1940mの塁壁で周囲を固め、国内外でアドリア海の真珠とも呼ばれ、ユネスコ世界遺産として保護されています。 アドリア海の対岸はイタリア半島で、ドブロブニクの緯度はローマとほぼ同じくらいです。

クロアチア政府観光局のインフォメーションによると、“この町はクロアチア最南端に位置し、最良の建築家や芸術家たちが幾世紀もかけて丹精に築いた遺産に囲まれています。 温暖な地中海性気候の中で育つ植物は、地元のものだけでなく、亜熱帯のレモン、オレンジ、ミカン、椰子、リュウゼツランなど多様で、ルネサンス様式の公園や中世の石造邸宅や静かな修道院の庭に咲き乱れています”…

それだけではありません。東側にはボスニア・ヘルツェゴビナとの国境をなす山々が控えていますから、気候も豊か。つまり、海のものも陸のものも、美味しいものにはことかかない土地なのです。

現在では廃れてしまいましたが、かつては独自の言語もあったそうです。絶滅言語となってしまったダルマチア語です。また、ダルマチアのクラッパの合唱は無形文化財としてユネスコの世界遺産になっているそうです。クラッパとは、ダルマチア地方の伝統的な無伴奏で合唱、重唱する団体で、私はネットの動画でしか見ていませんが、男性数人によるそれはそれは素晴らしいアカペラのハーモニーでした。(*文中の“クラッパ”の文字をクリックすると、画面が現れます)

このアドリア海沿岸の町は、中世から近代にかけてほとんどがヴェネツィア共和国の影響下にありました。ダルマチアの町々を歩くと、ヴェネツィア共和国の守護聖人である聖マルコのシンボルである翼の生えたライオン像がところどころで見られ、かつてヴェネツィアの支配下にあったことを物語っているのだとか。

クロアチアに行くのよ、と友人に話したら「あら。イーヴォにでも会いに行くの?」と、からかわれました。イーヴォとは、もちろん天才ピアニストのイーヴォ・ポゴレリチのことです。ああ、そうだ。青春時代には彼のステキなルックスとエキセントリックな演奏スタイルに憧れて、来日するたびにリサイタルに行ったり、音楽雑誌の記事をスクラップしていたっけ…(ちなみに、国籍はクロアチアではありませんが、泣く子も黙らせる女流ピアニスト、マルタ・アルゲリッチの元夫でもあったピアニスト、スティーブン・コヴァセヴィチの父親は、クロアチア人です)。

今回はなんだか、聞きなれないし舌をかみそうな地名や人名がたくさんでてきましたが、もうお一方。格闘家のミルコ・プロコップ(*本名ミルコ・フィリボヴィッチ)もクロアチア人で、彼の特徴的な赤と白の市松模様のファイティングパンツ(…っていうの?)はクロアチア国旗中央の国章によるものです。“プロコップ”とは、“クロアチア人の警官”という意味です。

格闘家はどうもねー、とおっしゃる方のために、今回の最後にクロアチア原産の愛らしいワンちゃんをご紹介しましょう。ディズニー映画『101匹わんちゃん』で知られるダルメシアン。その名の由来はダルマチアなのだそうですよ!白に黒ぶちの元気な“地元っこ”に会えるかどうかも、楽しみです。

(*敬称略)

2012年09月21日

« 第584回 思いは千の翼にのって | 目次 | 【おしらせ】 »

Home