第528回 高温多湿対策
父の転勤にともなって、幼稚園卒園直前から中学二年の秋までの約8年間、名古屋に住んでいました。
名古屋というと今でこそ、ひつまぶしや、天むすやらあんかけスパゲティ、そしてボリュームたっぷりの喫茶店のモーニングセットなどなど、独特のご当地食文化が話題に上りますが、当時は味噌煮込みうどんくらいしか知りませんでした。
食べることに今ほど情熱を燃やしていなかったあの頃の名古屋名物というと、頭に浮かぶのはまず中日ドラゴンズ。男の子はまず95パーセント、あの明るいブルーに“D”のイニシャルのついた野球帽をかぶって登校していました。残りの5パーセントの子はというと、東京や関西などからの転校生。でも、彼らの色の違う野球帽も、半年もしないうちにやはり周りと同じブルーになっていく運命にあることがほとんどでした。修学旅行で県外に行っても現地の方に「おや、名古屋から来たの?」と、当てられてしまうのでした。
当時のNHKの名物ドラマ『中学生日記』の撮影の舞台や登場している中学生たちも、名古屋でした。あのドラマは、“メイド・イン・名古屋”だったです。後に『金八先生』などの民放の学園ドラマが流行りましたが、『中学生日記』は恐らく、それらの先駆けだったとおもわれます。友人が出演していたこともあって、中学生当時はずいぶん熱心に見ていました。
でもでも。なんといっても、私にとっての名古屋の思い出というと、あの、ねっとり体にまとわりつくような湿気と熱気を帯びた夏の空気です。埼玉県の熊谷のように、気温が特別高いわけではないはずなのに、体感気温が妙に高かったのです。思春期だったから、身も心も“燃えて”いただけなのかな?いえいえ、それだけではないはずです。そのお陰で顔中にニキビの花を咲かせているのは、私だけではなかったのですから。
ニキビは青春のシンボル、なんて言われていましたが、そんなものは何の慰めにもなりません。気になって気になって、自宅での勉強時間が、どれだけ鏡を見ることに奪われたことか。それでなくても、セーラー服のプリーツスカートのひだを美しく保つため、せっせと毎晩寝押ししていた、三つ編みヘアの夢見る乙女だった頃のこと。ひとつニキビが増えたのを発見しては、みっつため息をついてしまうような日々でした。
そんな私の唯一の慰めは「(ニキビの悩みは)私だけじゃないもん。みんなもそうだもん」ということ。みんなも同じなんだから、と納得させようとしていました(日本人ですね)。
それは、やがて全否定される時がやってきます。仙台に転校した時です。夏でも水が冷たく、爽やかで湿度の低い東北では、ニキビの女の子はほとんどみかけませんし、当時夏は真っ黒に日焼けしていた“地黒”の私と違ってみんな肌のキメの細かい色白さん。あっと言う間に私は「セーラー服のニキビの転校生」と呼ばれるに至りました(*注:東北地方は寒いので、胸元のあくセーラー服を制服としている中学校は少なうのです)。
思春期の私の、それ以降ニキビの悩みがいかに大きなものだったか!…弟が心配して、ニキビ治療薬を買ってきてくれたりしたものでした。まぁ、今思えば、それがピアノの練習に打ち込む原動力になったのかな、と(なんて、実際にはまったく関係ありませんでした)。
冗談はさておき、まだ梅雨も明けていないのに、千葉は毎日暑いです。暑苦しいです。これは、湿気のせいです。暑いだけなら、こんなに辛くないのです。
でも、今年は節電の夏。なんとか気持ちだけでも涼やかに乗り切りたいものです。そこで、少しでも涼しい気持ちになることを、三つほど考えてみました(と、ここで前ふりが長すぎたことに気づいたので、ここから先はさくさくいきます)。
一つ:香り。お部屋に、清涼感のあるミントや柑橘系のアロマオイルを焚きます。メンソール系の香りは感覚的に“爽やか”さを連想させてくれるので、体感温度が一度ぐらいは変わるかも。
一つ:音。熱を持って熱を制す、という考え方なら、思いっきり熱いラテンのサンバやフラメンコ系、そうじゃないならブラジルのボサノヴァがオススメです。特にボサノヴァは、夕暮れ時に窓を開けて、少しでも風を感じながら聞くと、日中激しい暑さと戦った自分のテンションが落ち着いて、いい意味で脱力しリラックスできる気がします。好きな音源を見つけるのも楽しいものです。
一つ:食。体を冷やす野菜や果物をとる。…とはいえ、あまり体を冷やしすぎるのは良くないので、冷たいものをあまり飲まないようにすることでバランスをとるようにしています。お茶は冷蔵庫に作り置きせず、そのつど温かいものを淹れています。特に寝苦しそうな夜は、就寝前に逆に温かいハーブティーを頂いて体の中を温めると、よく眠れるような気がします。
それ、効果あるの?ですって?…どこまで効果があるかは分かりませんが、まだ暑さの序の口とはいえ、今のところピアノのレッスン中以外、エアコンは使わずに過ごせていますよ!