第520回 ラン・ラン・ラン!
気持ちにちいさな異変がおきています。桐朋学園時代の恩師、林先生がお亡くなりになってから、どうも以前とは違うことを意識するようになっているのです。
それは、健康の維持について。心も、体もです。
病気知らずの丈夫な体に産まれてきたこともあり、これまで自分の体のことや健康についてほとんど頓着することがないまま生きてきました。特に、離婚してからは「夫も子供もいないのだし、健康に神経を使うより人生楽しむのが一番!」とばかりに、健康診断もろくすっぽ受けることなく、できるだけ病院を避けるようにして好きなように過ごしてきた気がします。
それが間違っているとは思いませんし、今も人生は楽しむためにあるものだと思っています。
でも、それも健康な体があってこそ。今はいいけれど、この先の長い(?)“おひとりさま”人生をめいっぱい謳歌しようというのなら、“健康”は言うまでもなく、他のものにはかえがたいとても大切な財産です。
今までも、体調が心配になってちょっとウォーキングをしてみたり、ヨガを始めてみたりしたことはありますが、痩せてしまい、生理が止まってしまったという苦い失敗もあって、自分には運動は向いていないのかな、と思い込んでいました。
当時、バランスを崩していたのは、体調だけではなかったのです。むしろ、心の調子が悪かったので、崩すべくして体調を崩してしまったのだと思います。振り返ると、その時は心も一定の健康が保てていませんでした。自信がないので「ちゃんと自分をコントロールできている」という実感を、へんなところ…つまり、体重と体調管理に求めてしまっていたのです。お休みの日に一日中(?)、歩き回ってみたり、毎日体重計にのっては緩やかに体重が落ちていることを安堵していました。
ストレスや空腹で夜眠れなくなったり、眠れないのが怖くてお酒を飲みすぎたり。すると覚醒作用で夜中に目が覚めてしまって、悪循環でした。どんなに運動しても繊維や水分をとっても、食べる量が少ないから便秘が慢性化。ほとんど薬に頼っていた、というひどい状態だったのに、それを認められなかったことを思うと、精神的に健康ではなかったのです。ついに「そんなに痩せたままでは、将来はガリガリおばばよ!」と親友に渇を入れられ、我に返ったという始末。
体は弱っても、心は最期まで健やかで、決して病気を克服することを諦めなかった林先生。先生は死をもって、「心も体も、健康であれ。自分の心身の健康を、きちんと管理して生きなさい」と、私たち門下生に最後の教えを下さったような気がするのです。
そういえば、体重が戻ったのはいいとしても、以前の体型を通りこしてお腹周りがぷよぷよに…同じ体重でもシルエットが確実に違います。ぽっちゃり体型がもっとも長生きできる、というデータがあるものの、もともと高脂血症で甘いものには目がない私、このままではメタボリックシンドロームや糖尿病へまっしぐら、ということになりかねません。
とはいえ、腰が重く三日坊主の私のこと。「死ぬまで元気で!」なんていう地味なスローガンを掲げるだけでは、とても何らかの行動を起こせそうにはありません。心身の健康管理のために、いったい何を始めたらよいのでしょう。体調だけでなく気分もよくなって、できればピアノも上手になるようなことなら、続けられるかもしれません。何かないかしら…。
なんとか一念発起を、と考えていたら、ふと、周辺にランナーの友人が増えていることに気づきました。何かの啓示かな?彼らが共通してもっているのは、屈託のない笑顔と行動力、前向きな気持ちと決してくよくよしない潔さ。それらの“体育会系”さわやか感は、“超文化系”の私は持ち合わせていないものです。
彼らは異口同音に「走った後の爽快感はたまらない」「走るのが楽しい」と言います。「体だけじゃなく、気持ちもすっきり軽くなるの。気のせいか、楽器を弾くのもラクになってきたみたい」という音楽家仲間も…。むむ、まさにいいことずくめではないですか。本当なのかしら?
ちょっとやる気になって「そんなに気持ちがいいものなら、私もやってみようかな」と、呟いてみたら、「美奈ちゃんは、走るより、まず歩くことから始めなくちゃね」と言われてしまいました。え~?せっかく少しやる気になったのに。でも、今回ばかりはめげずに、走ることを始めてみようかと思っています。
今度のお休みに、さしあたってはランニングシューズを見に行こうっと!