第513回 怒りの地球
『一笑一若、一怒一老(いっしょういちじゃく いちどいちろう)』
中国の格言で、人間は笑った分だけ若くなり、怒った分だけ老いてしまう、という意味だそうです。
確かに、いつも微笑んでいる人って若々しいし、怒りっぽい人は苦虫をかみしめたような痛々しい表情が板についてしまうものですね。
宇宙から地球を見た飛行士が、口をそろえてその美しさをに驚嘆する地球。
豊かな実りや、生命を育む水をもたらしてくれる母なるこの星は、何億年ものあいだ、我々生物に微笑みかけてくれていました。
時に、不必要に壊しがちになる人間に対しての教育的指導(?)と思われる愛のムチ“天災”をもたらしながら、
まさに母親のように、私たちを見守り続けてくれていたのです。微笑を浮かべながら。
その微笑が、このところ怒りに変わってきてしまっているように感じるのは、私だけでしょうか。
液状化現象をおこして水浸しになった地に、火を噴くコンビナート、放射線が漏れ出す原子力発電所…。
もともと海だったところを陸地にするために、海底に道路をとおすために、快適な電脳生活のために
私たちはどれだけの自然を壊し続けてきたことか。
どれだけたくさんの石油を地底から吸い上げてきたことか。
どれだけの電力を無意識に使いつくしていることか。
それらはすべて、人間の最高の英知と技術によって行なわれてきたのですが、
人間にとって優しいことが地球にも優しいこととは限りません。
このところ各地で相次いでいる異常気象や自然災害を目の当たりにするにつけ、
地球が私たちに怒ってみせているような気がしてなりません。
『一怒一老』
大学受験の年、合格を祈願して初日の出を見に行った荒浜港に、
たくさんの溺死体が漂流していると報道されています。
あの時、希望の陽が浮かび上がった、きらきらと輝いていた海面が、死体の海になってしまうなんて…。
地球に、もう、これ以上怒ってほしくありません。
地球が老いていくスピードを少しずつでもゆるめていくことこそ、
今私たち人類がその英知や技術、協力精神を発揮して取り組まなければいけない、最大の事業なのではないでしょうか。
今回の地震で失われた尊い命を、無駄にすることは許されません。
余計な時間は、もはや一瞬たりとも残されていないのです。