第503回 simpleなプレゼント
今年初めて出演することになった、地元で開かれてるクリスマスコンサートが近づいてきました。久しぶりに歌手の方々ともご一緒します。にぎやかなステージになりそうで、当日がとても楽しみです。
子供のころ、クリスマスといえばサンタさんからプレゼントがもらえる日、でした。両親のサンタぶりがあまりに巧妙?で、サンタは実在するものだとすっかり信じていた妹が、小学校に上がってしばらくしてからそれが違っていたと知り、失意のあまりにさめざめと泣いたことが思い出されます。
そういえば、かつての妹は思いがけない場面で泣くところがあって、クリスマスの特別料理、母の手製のグレイビーソースでいただく自家製ローストチキンの分け前を受け取った次の瞬間、「わたしのもも肉、皮が少ない!」と、声を震わせて訴えながら泣きだし、周囲を戸惑わせたこともあったっけ。妹に限らず、つくづく食べることが大好きな家族なのです。
大きなホールケーキがテーブルに鎮座するだけで異常にテンションが上がったのは、それを年に数回しか食べられなかったがゆえです。たまにしか食べられないものを食べられる!ただそれだけで幸せになれるのですから、人間(私だけ?)って、案外シンプルなものです。
とはいえ、相手に心から喜んでもらえるもの、幸せな気持ちになってもらえるものをプレゼントするのは、なかなか難しいことです。修行を積んでそれができる大人にならないと、一人前の“サンタさん”にはなれません。
“サンタさん”からクリスマスのプレゼントをもらわなくなって、早幾歳…。良き“サンタさん”を目指し、“元・サンタさん”へのプレゼントを考えました。今年はなんとなく「物」ではないものを贈りたくなって、先日サントりーホールで行なわれた、ドレスデンフィルハーモニー管弦楽団によるバッハのマタイ受難曲のコンサートにしました。とても喜んでもらえて、私も心底幸せな気持ちになりました。
さて、つい先日、ある方から意外なクリスマスプレゼントを頂きました。「詩」をプレゼントして頂いたのです。といっても、その方は詩人ではなく、頂いた詩は自作のものではないのですが、読み返すたびに心がじ~んと温かくなりました。
どうやら、誰もが知っている有名な方の歌のようなのですが、私はポップスに疎いのでちっとも知りませんでした。Mr.Childrenというバンドの桜井和寿さんの書いた、『Simple』です。この詩にいったいどんなメロディーがついているのかとても気になって、早速検索してみました。聞いてみたらその曲も桜井さんの歌も素敵で、プレゼントを二度、頂いたような気持ちになって、しみじみと幸せをかみしめました。
年末年始は、プレゼントを贈ったり贈られたりする機会が増えます。本当に喜んでもらえるものを贈れるサンタさんになりたいものです。
え?「その詩の贈りものって、男性から?女性から?」ですって?ふふふ…それはヒ・ミ・ツ。
『Simple』
マイナス思考で悩みまくった結果
この命さえも無意味だと思う日があるけど
「考え過ぎね」って君が笑うと
もう10代の様な無邪気さがふっと戻んだ
10年先も 20年先も 君と生きれたらいいな
悲しみを連れ 遠回りもしたんだけど
探してたものは こんなシンプルなものだったんだ
喧嘩した時には欠点でもあるんだけど
自分に正直で遠慮の無いとこに惹かれんのさ
互いに背負った傷をいつしか
ちょっとはにかんで交換し合えたならいいな
寂しい曲も 哀しい曲も 君と奏でればいいや
失ったものを さりげなく憂いながら
微かな戸惑いを そっと吐き出しながら
ざあざあ降りの雨を全身で受けながら
凛々と茂るあの草木の様に
強く 強く
10年先も 20年先も ずっと傍に居て欲しいんだ
悲しみを連れ 遠回りもしたんだけど
探してたものは こんなにシンプルなものだったんだ
君となら 何だって信じれる様な気がしてんだ
探してたものは こんなシンプルなものだったんだ