第488回 豆・豆・豆

本来、採れるはずのなかったような地域でバナナやブドウが収穫できるようになったり、その反対の現象が起きたり、ロシアで暑さによる森林火災が発生するなど、年々、「地球がおかしくなっている!」という危惧を覚えないでいられる方が困難な現象が、増えています。

暑い夏…。昔の人なら、軒先に風鈴をぶらさげたり、打ち水をしたり、家に氷をおいて涼をとったのでしょうけれど、今はとてもそれでは凌ぎきれません。意地を張って暑さを我慢しようものなら、容赦なく熱中症に襲われてしまいそうな厳しさが続いています。

環境がこれだけ壊れてきているのですから、繊細な人間の体に異変が起こってきてもおかしくはありません。昔はあまり聞かなかったような病気や様々なアレルギーなどが、市民権を得たかのごとくに世の中に蔓延しているのも、避けられないことなのかもしれません。

私の周囲にも、色々なアレルギーを持った人がたくさんいます。私には幸い、今のところは何も症状がありませんが、それもたまたま今までは大丈夫だったというだけで、いつどんなものを発症するかはわかりません。

先日、友人と「食物アレルギー、自分には何が一番辛い?」という話になりました。ある人は「米」、ある人は「麦」と答えました。ちなみに、偶然かもしれませんが、米、と答えた人は日本酒党で、麦、と答えた人はビール&ウィスキー党の人でした。お酒の好みと食の好みは、互いに反映しあうものなのでしょうか。

さて、私はというと、ずばり、「豆」です(実は、牛乳、バター、ヨーグルト、そしてチーズが食べられなくなってしまうから「乳」、にしようかと迷ったのですが、ミルクは豆乳で、チーズは、美奈子特製の豆腐の味噌漬けで代用して凌げるだろう、というもくろみです)。

豆の中でも、特に大豆は辛い。だって、大豆がだめとなると、納豆やお豆腐、枝豆にきな粉もちはもちろん、醤油や味噌も味わえないということになってしまうのです。それに、豆には大豆以外にもインゲン豆にえんどう豆、手亡豆や小豆、花豆、空豆などだけでなく、カカオ豆、コーヒー豆(これはちがうか?)も含まれます。もし、これらを一切受け付けられない体質になったら、どうしよう…!

ティータイムの至福のショコラを口にすることができないばかりか、練きりや羊羹、大好きなおまんじゅうやどら焼きの類はアウト。米や小麦がだめなのも辛いけど、豆全般がたべられなくなったら、私にとって、食べる楽しみ(=生きる楽しみ!)が半減してしまいそうです。

それにしても、世界広しといえどもどの国にも豆を使った郷土料理が必ずといってもいいほどあるのには、改めて驚きます。

沖縄には、豆腐を紅麹や泡盛などで発酵させて作った“豆腐よう”や、大豆の代わりにピーナッツを使った“ジーマーミ豆腐”があるし、中国料理には黒豆を発酵させたトウチや、緑豆から作られる春雨がよく使われます。インドネシアではピーナッツソースを使った温サラダ“ガドガド”や、鳥の串焼き“サテ”が有名だし、メキシコのキドニービーンズなどを使った“チリコンカルネ”、フランスのラングドック地方の煮込み“カスレ”や、中近東でとてもポピュラーなヒヨコ豆のペースト“フムス”(←個人的に、大好物です!)、南インドの豆のスープ“ラッサム”などなど…。

「貧乏人のお肉」とも言われる豆ですが、それだけ良質な蛋白を持つ、滋養が豊かま食品だということでもあるのでしょう。(あ!今気づいたのですが“豊か”というのは、“豆が曲がる”と書くのですね)。お正月に黒豆を炊いたり、節分に豆をまいたり、お彼岸には小豆をたっぷり使ったおはぎを頂いたり…。季節の節目節目に豆が登場する日本人の生活と豆は、切っても切り離せない、深い関係にありそうです。

あら?そういえば、米を使ったお酒も、麦やトウモロコシ、アロエのようなリュウゼツラン(テキーラの原料です)、様々な果物はもちろん、ハチミツから作られたお酒まであるのに、お豆が主原料のお酒って聞いたことがありません。どこかに、何か、あるのでしょうか?

いやいや、あるではありませんか!地元千葉県は八街の名産である落花生を使った、焼酎“ぼっち”というものが!う~ん、でも、どうも何か違う気が…。調べてみたら、主原料は米、米麹で、落花生は「3%使用」なのだそうです。やはり、お酒の原料に適するのは炭水化物系の食品なのですね。豊富な蛋白質があるお豆は、まさに“畑のお肉”ということなのでしょう。

2010年08月27日

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