第444回 第二弾開講!

昨日、昨年度初めて行なって好評だった『大人のための音楽塾』第二弾がスタートしました。全12回を半年にわたってこなした昨年度に対して、今年度は一ヶ月に一度のペースで4ヶ月かけて消化する、というゆるやかなペース設定にしました。そのかわり、ひとりの作曲家に焦点を当て、じっくりと学び、聴きこんでいくという趣向です。

その作曲家とは、バッハです。そう、今回の音楽塾のテーマはずばり“バッハを愉しむ”なのです。バッハというとやはり硬くて地味なイメージかしら、受講生は集まるかしら、と、不安もあったのですが、「そもそも自分がやりたいことをするのだから、たとえあまり集まらなくても気にしないようにしよう」と、腹をくくっていました。果たして…告知してすぐに10数名の方から申し込みを頂きました。ありがたいことです。特に嬉しかったのは、前回受講された方全員からのお申し込みを頂いたこと。これはリピーター率100パーセントということで、何よりの励みになります。

そして、嬉しいことがもうひとつ。前回はご夫婦での参加はなかったのですが、今回は二組のご夫婦が加わって下さることになったのです。この講座を切っ掛けに、ご夫婦の共通の話題が増えたり、ご一緒にコンサートに出向いて下さったら、どんなに素敵でしょう。

第一回目は『J.S.バッハとその時代』と題し、ルネサンスからバロックへの変遷、ポリフォニーとホモフォニーについてお話しながら、同じ作品で異なる楽譜を見比べてみたり、あるいは異なる演奏を聴き比べてみたりしました。そして、バッハと同年代の他の作曲家の作品などもご紹介しながら、彼の音楽観や表現の個性に迫り…と、聞くと何やら小難しい内容のような印象を受けるかもしれませんが、実際はさにあらず。愉しんで聴いていただけたのではと思います(多分…!)。

90分の講義のあとのティータイムのお茶うけに、バッハゆかりの地を旅したときの写真をご覧頂いたり、欠席された方からの美味しい差し入れ(なんと、私の大・大好物、中津川の“すや”の栗きんとんでした!)に舌鼓をうったり…。おしゃべりもはずんで、和気藹々と会が進みました。終了後には、「チェンバロの響きって、なんだかはかないですね」「古典調律の話は、すごく参考になりました」「長年ピアノに関わっているけど、知らないことばかりで、楽しくてあっという間でした」と、皆さん口々に感想をお話くださって、感激でした。来月の第二回目でまた皆さんにお会いできる時が、今から待ち遠しい気持ちです。

受講生の方には私よりも若い方もいらっしゃいますが、大半は人生の先輩の方々です。開始時間の30分も前にいらして下さったり、講座でお話した内容についてご質問下さったり、熱心にメモを取りながら話を聞いて下さったり…と、皆さんの“学ぶ”真摯な姿勢に、頭が下がる重いでした。

先日テレビのトーク番組で、ある若い(まだ10代の!)俳優さんが、オーディションを受けるのが大好きなんです、と、断言していました。「同世代の、同じことを目指している他の人たちの真剣さに触れて、“ああ、こういうところ、自分は負けてるなぁ”とか、“なるほど、そういう表現もあるのか”とか、気づかされることが多いんです。すごく勉強になって、それが楽しくて。オーディションはずっと、受けていたいです…」

もし落ちたらどうしよう、と、怖くなったり、落ちて落ち込んだりはしないのですか、という司会者の問いに対しては「勿論、ほとんど落ちるんですよ。でも、その時は、自分の人格を否定されたわけじゃないのだから、と、思うことにしているんです。たまたま私は、その役のイメージではなかったのだな、と考えて、気持ちを切り替えるようにしています」と、爽やかな笑顔で答えていました。まっすぐな瞳の輝きが、印象的でした。

何かに気づいたり、何かを学ぶために、様々な経験を積む。人間にとって、とても大切なことだと思いますし、それは一生積み重ねていけることなのではないでしょうか。そして、経験を通して、感謝の気持ちを抱けるようになることこそが、人間の支えになる、もっとも大切な“柱”になるのではないでしょうか。

日々、反省させられることばかりですが、学びの機会を与えられていること、そして周囲の方々に恵まれて生きていることに対して、感謝の気持ちを忘れないようにしたいものです。そして、自分にできることを一つ一つ、丁寧に、心を込めて積み重ねていきたい…。素直にそんな心持ちになった、第二弾一回目終了の夜でした。

2009年09月18日

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