第378回 月の光とUFOと

春に三日の晴れなし、といわれますが、そんな不安定なお天気も春の風情。…と、涼しい顔をして言えたらいいのですが、お天気にはかなり気分が左右されてしまう方です。

例えば、朝から燦々と陽が照っていればそれだけで「神さまありがとう!今日もがんばろう!」と、前向きな気持ちになれますし、反対にどんよりしていると「今日できることは明日しよう!」と、明日以降の近未来に向かって前向き(?)になる、という具合です。

そんな動物的感覚で生きている私にとって、中学校のころから陽が沈んだ後はなにかほっとできる時間でした(小学生の時は8時ごろに就寝していたので、あまり夜の記憶がありません。たまに家族で『日曜洋画劇場』を見るときと大晦日だけは、例外的に遅くまで起きていることが許されましたけど…)。お日さまに変わる夜の友だちは星と月。特に月が好きでした。見えたり見えなかったりする星と違って、ある程度お天気さえ良ければいつもその姿を確認することができるし、車に乗っていると一緒についてきてくれる…。目の悪い人も見つけることができる大きさで、様々な姿を見せてくれるおおらかな月は、思春期の私の頼れる相談相手だったのです。

そうなのです。これは本邦初公開の事実なのですが(下らないこと言ってしまいました。下手な照れ隠しだと思ってお許しを…!)、実際に自分の部屋で、よく月にこっそり話しかけていました。へんな子、と思われても仕方ありません。だって、本当のところ、へんな子だったのですもの。もっとへんなことに、月に名前までつけていたのです。その名も『フレデリック』。今思うと、なんて少女漫画の世界に浸っていたのでしょう。ああ、恥ずかしいったらありゃしない。

フレデリックというのは、当時誰よりも、というより何よりも好きだったショパンのファーストネームです。何かについて悩んだり迷ったり、憤ったり悲しくなったりすると、そっと窓のカーテンの裏に入り込み(そうすると、部屋の中からは私の姿が見えなくなる)小さな声で話しかけては答えを求めていました。気づくと、ぼ~っと30分ほどの時間を過ごしてしまうこともありました。

日が暮れて、空が暗くなるにつれその姿をくっきりと浮かび上がらせる月の存在は、私にとってとてもロマンティックなものでした。あるいは、いつもどこかで見守っていてくれる“守護神”のようなものに感じていたのかもしれません。

月の光、というピアノ作品があります。月光、ならベートーヴェンのソナタがよく知られていますが、このタイトルは作曲者がつけたものではありません。月の光というタイトルで何といっても一番有名なのはドビュッシーの『ベルガマスク組曲』の中の一曲です。でも、その他にもいくつかあるのをご存知ですか?私が知っているものでは他に、フォーレの同名の歌曲があります。ヴェルレーヌのえもいえぬ美しい詩につけられた音楽です。その他にも、ヴィエルヌのピアノソロのための作品『ブルゴーニュ組曲』の最後におかれた同名の楽章があるのですが、こちらはほとんど演奏されることがないようです。

この三人ともがフランス人。フランスといえば、ヨーロッパ宇宙機関の代表を務め、その中心的役割を果たしていて、フランス国立宇宙研究センター(CNES)があることでも知られている国です(ただ、昨年そのウェブ上で、どうしても説明不可能なUFOの存在についての情報を載せたところ、世界中から凄まじいアクセスがあってサーバがダウンしてしまったとか…。実際にはUFOというよりUAP(未確認空中現象)についての情報だったそうですが、いやはや、この科学的なのか非科学的なのかが曖昧になりがちになる感じが、なんともフランス的な気がします)。フランスにおける月の光と宇宙研究の因果関係についてはよくわかりませんが、あながち「シロ」でもないのかもしれません。

天体について、あるいは宇宙の現象について知るのは素敵なことですが、個人的にちょっと抵抗があるのは宇宙開発、という言葉です。こんなに地球をいじめてきてしまったのに、その地球をきちんと元に戻すすべもみつからない(見つかったとしても、実現させていく目処がきちんとたっていない)状態で、この上さらに他の星や空間を“開発”してしまってよいものなのでしょうか?いくら人間は探究心を持った生き物だからとはいえ、ロケットのようなものをどんどん打ち上げていたら、ますます地球が壊れてしまうのではいか…と(知識が少ないので)、心配になってしまうのです。そんなことに莫大な国家予算を費やすよりも、もっと人々が心穏やかに、慎ましやかな幸福感をもって生きていくための予算を組んでくれた方が嬉しいと思ってしまう私は、あまりに保守的なのでしょうか。

ところで、ある友人曰く、「結婚相手は、宇宙飛行士になれるような人格の男性がいいわ。頭脳明晰だけどちゃんと仲間を大切にする協調性もあって、どんな非常事態にも冷静に対応できるような人…」。なるほど、確かに!でも、残念ながら宇宙飛行士とは今まで縁がなかったなぁ。

2008年04月24日

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