第290回 続・一生懸命歌うから

コンサートSYMPOSIONの第一回目が終わって一週間になります。今まで以上に、多くの方に支えていただいて実現した、そして成し遂げることができたコンサートでした。

このコンサートのコンセプトを形にして、それを皆さんにお伝えし、お誘いするためのフライヤー(チラシ)を作成するために、徹底的に関連の文献や資料を研究し、来る日も来る日もメールのやり取りを無数に(!)繰り返して、お忙しい中を私の相談にも迅速かつ誠実にのってくださった、ForisのTさん。

お店で、ブログで、ラジオで…そしてとびきりのステキな笑顔で、私のコンサートを周りの皆さんに紹介してくださった大好きなカフェのオーナー、Kさん夫妻には、どんなに大きな支えになっていただいたか分かりません。コンサート当日はお店を臨時休業にまでして、スタッフみんなで駆けつけてくださいました。

ピアノは、キャスターの向きや位置がほんの数センチ変わるだけで音の響きがぐんと変わるので、つい厳しくチェックを入れてしまう私に、とことん付き合って一番いい状態を一緒に作ってくださった調律師のSさん…。私の演奏を永年(?)聴いてくださっているけど、今回は「美奈子さんがそんなに無垢に、純心にピアノを弾く方とは…。まるでベートーヴェンの恋人が彼の曲を奏でているようです!」と、特別なお言葉をいただきました。

まだ幼いお嬢さんを連れて、忙しい時間をやりくりして聴きに来てくれた高校時代からの友人、「最後の32番では不覚にも涙がでてきました」と、直後にメールをくださった某有名オーケストラのプレーヤーさん、他県から駆けつけてくれた生徒さん…。お一人お一人に心から感謝の気持ちでいっぱいで、もう身体がはち切れそうです(もちろん、掛け替えのない私の両親や、今日誕生日を迎えた妹にも!)。

今回、特に嬉しかったのは、多くの皆さんがとても熱心なご感想を寄せて下さったことです。ベートーヴェンについて、あるいはその作品について、また、コンサートそのものについて…。本当に多くのお声を頂きました。“終わった後に、それについて熱く語り合いたくなるような”コンサートに!、…というのも、SYMPOSIONというコンサートシリーズの重要なコンセプトの一つだったので、これはとても嬉しいことです。しかも、オール・ベートーヴェンという、最もお堅い(?)プログラムだったというのに、皆さんがとにかく「楽しかった!」とおっしゃってくださったのは、何よりの励みになりました。

こんなにも素敵な周りの方々に恵まれていることへの感謝を込めて、これからも精一杯、心をこめて音を奏でていきたい…。「一生懸命“歌う(弾く)”から、どうかこれからも、見守っていてください」…そんな気持ちでいっぱいです。

東京公演を聴きにきてくださったカフェの店長Yokoさんが、後日感想を詩にたくして贈ってくださいました。それはもちろん、彼女の人並みはずれた感性があってこそ、ではあるのですが、音を、音楽をこんなふうに伝えられるようになることは私の夢だったので、読んでいて涙と感謝の気持ちがあふれ、しばらく幸せな気持ちで呆然としてしまいました。そして、同時に「これからもずっと精進していきたい」、という気持ちがわいて来たのでした。個人的なメッセージなので、ご紹介するかどうかかなり迷ったのですが、あまりにも素敵な詩なので、彼女の許可を得て掲載させてもらうことにしました。

皆さん、本当にありがとうございました!

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その細い肩と指先に

あなたは全てを背負っているのですね

想像のつかないくらいの思いと決意を胸に秘め

ピアノに向かって真っすぐと

足を運ぶその姿に

眩しさ感じてしまいます

何も知らない私だけど

あなたの紡ぐ音色には

あなたにしか表わせない

楽譜を超えた世界を見ました

そっと目を閉じ息をはき

音色の波に身を委ねれば

全ての現実は虚無となり

私はしばし私から

解き放たれて音と溶け合う

あなたの音色に導かれ

私が見つけて得たものは

自分を信じる気高さと

顔を上げ、前だけ見つめ進み行く

美しい横顔でした

意志の強さに裏打ちされた

しならかさと聡明さ

あなたのように生きたいと

焦がれずにいられません

2006年06月15日

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