第275回 たまには恋の話しなど…
「どうして女の子から、なんだろう?」「どうしてチョコレートなんだろう?」…初めてバレンタインデーの存在を知ったときから、この二つが気になって仕方ありませんでした。実は両方とも、日本ならではのルール(に、無理やりされてしまったようで…)なのだ、ということは、随分後になって知りました。
中学生の時、どうも私を気にしているぞ、という男の子の存在がありました。F君といいました。九州からの転校生で、目鼻立ちのはっきりとした、ハンガリー人ピアニストのデジェー・ラーンキ氏に似たなかなかのハンサムでした。サッカー少年なのに自らすすんで音楽係になって、なにかと私に音楽のことを聞いてきたり、帰り道にさりげなく、私を待ち伏せ(?)していたり、と、他愛もない意思表示をしてくれていました。どこからか視線を感じると、だいたいF君からでした。
ところが、しばらくすると、F君の親友のU君が私を意識している、どうやら“好き”であるらしい、という噂が立ったのです。そのあたりからF君の私似たいする態度が、少しずつ変わっていきました。例えば、私が近づくと「おい!U!鈴木来るぞ!」などとU君をからかうのです。目が合ったときの視線の外し方もぎこちなく、彼が私から離れようと(それ以前もくっついていたわけではありませんが…)しているのは明らかでした。(今思うと、この頃が私の『恋愛黄金時代』だ…。)
「これ、F君に渡すの。」バレンタインデーに学校にチョコレートはも持ってきてはいけない、という規則だったのに、Aちゃんはそれを果敢にも無視したようでした。「Aちゃん、F君好きだったの?」「そうだよ!だってF君、カッコいいじゃない!」…フクザツな気持ちでした。F君を特に意識しているわけではないと思っていたのが、U君の出現やAちゃんの行動によって、何かどこかが“変化”しているのを感じました。
小さい時はおませだったので(多分)、男の子に告白したことがなかったわけではありません。『初告白』は小学校2年生の時でした。学校の水飲み場で偶然二人になったので、お相手のY君に「わたし、Y君、好きなんだ…」と、言ってしまったのです。一応、どきどきしました。Y君は「僕も…」と答えてくれたのですが、問題はそのあと。お互いに気まずくなり、「あれ?コクハクって案外、してしまうとつまらない」と思ったのでした。
両思いになったとたんに、冷めてしまう恋もあるんだ、と、その時私は悟ってしまったようです。F君の場合はその反対に、告白することはありませんでしたが、お互いの気持ちの揺れや考えていることがなんとなく伝わってしまって、かえって切ない状況になったのです。まもなく私は、遠いところに転校してしまいました。
それでなくとも様々なリスク(?)がある“告白”です。バレンタインデーには女の子からだけではなく、男の子からアプローチするのも“あり”だった方がいいと思うのだけど…。それにチョコレート!チョコレートほど、世の中の女の子が大好きな食べ物が、あるでしょうか?ここは是非、男性からも見繕っていただきたい!第一、考えてみたら義理チョコ、というものを女性が男性にまず、捧げなければならない、というのもなんだか不思議な話です。せっかく西洋から来たの風習なのに、このシステムは全くもって、日本的(明治維新後の)すぎるのでは?
屁理屈に熱が入ってきました。これでは読んだ方が「よっぽど美奈子さんはチョコレートが欲しいのね」と、気を遣ってしまわれることでしょう。いけないいけない。…でも、チョコレートって、甘くて美味しくて心を満たすだけじゃなく、実は体にもとってもよい働きをするのだそうですね。…あ、いけないいけない(もう手遅れ?)。