第266回 かぐはしき人生

先週、『写真処』を半年ぶりに更新してお菓子の写真なんぞを載せたところ、「作り方も教えて。できればお料理も」という嬉しいリクエストを頂いたので、調子に乗って久々に新ページを開設しました。題して『MINAのはな歌クッキング』。

書いてみて改めて感じるのは、「作り方は、レシピにはとても書きつくせない!」ということ。以前もこのことはぼやいた気がするのですが、玉ねぎ一つでも春のものと冬のものでは違いますし、にんにく1かけ、といったって、どの程度の大きさと香りを持つものなのかで違ってきます。何分煮込むか、に到ってはお鍋や熱源、火加減によってもうまったく違いますから、最近はお料理の先生もあまり明記しなくなってきているようです。

私が唯一、モットーにしているのは、「楽しんで作る!」ということ。とにかく、野菜を切る時にはそれぞれの硬さの感触を楽しむ、香りのもの(にんにくや生姜、ハーブなど)はこの時点ですでにいい香りも楽しむことができます。鍋に油をまわして玉ねぎを炒めた時にたつ香りと質感、色の変化を楽しんだり、煮物では味を入れる前の、具と出汁の“初期”ならではの素朴な味を楽しみます。前回とちょっと違うタイミングで調味料を入れて反応を見たり、調味料自体(お味噌やみりん、砂糖の種類など…)をちょっと変えてみるもの面白いものです。こうして楽しんで作っていると、味にも良い影響があるような気がしてならないのです。

…なんて遊んでいるものだから、気がつくと粉類だけで薄力粉に強力粉はもちろん、ライ麦粉にコーンミール、上新粉、葛粉、そば粉やわらびもち粉(!)、全粒紛、玄米粉に地粉…と、二桁にのぼる種類を棚に抱えていたのでした。それでも、これは立派な“食品”なのですからまだ分かります。大変なのは調味料。これが奥が深くって…。例えば、酢。米酢、もろみ酢、梅酢、バルサミコ酢、ワインビネガー(赤と白)…と、収納スペースは限られているのに、じわりじわりとキッチンを圧迫してきて困っています。

それに加えて、お菓子を焼くようになってから砂糖の種類も増えてきました。今までも上砂糖と三温糖、黒砂糖とブラウンシュガーくらいは使い分けていたのですが、それにグラニュー糖、粉砂糖やパームシュガー、やらメープルシュガー、和三盆糖なんかが加わってきてしまったのです。ううむ…。

こうなると今度は、いかにこれらのものを分かりやすくかつ使いやすく、コンパクトに収納してみせるか…、というところにまた、妙な闘争心が沸いてきたりするのです。それというのも、お料理をしたりお菓子を焼いている時の、あの、何ものにも代えがたい、えもいえぬいい「匂い」のため。

考えてみると、料理の本が好きでつい、集めてしまうのも、この匂いにうっとりしていやなことなんてあっけなく忘れてしまうのも、幼児体験から来ているようです。妹と頭をつき合わせてハードカバーのお菓子の本(母の蔵書)をのぞき込み、ページをめくっては、「ミナコちゃんはどれがいい?」「私はこれ。マコちゃんは?」「私はこれが食べたい…」なんて、今度母にリクエストするケーキについて話し合ったり、母がいざ、ケーキを焼こうものなら、小躍りしながらキッチンに行って「ママ!バターちょっとなめてもいい?」とせがみ、いい匂いを発しているオーブンをのぞいて今やおそしと、焼き上がりを待っていたのですから。その間は姉妹けんかもなし。

いい音楽と、美味しいものと美味しい匂いがあれば、世の中の理不尽な争いなんて消滅してしまいそうなのに…、と、思うのは音楽馬鹿で食いしん坊の私だけなのかしら?

2005年12月08日

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