第261回 すてきなプレゼントを!

今回の更新までの間に、また一つよけいにトシをとってしまいました。11月1日は私の誕生日、というだけでなく、あのキティーちゃんのお誕生日でもあるらしいです。

ちなみにキティーちゃんは、生まれ年こそ違うけれど(1974年)、誕生日だけでなく血液型も同じA型(ネコのA型…?)で、将来の夢はピアニスト、というところもなんだか妙に共感…。ちなみに彼女の身長はりんご5個分、体重はりんご3個分で、食べ物はママの作ったアップルパイ…、と、基準や好物がりんごで徹底されているのは、11月という季節柄でしょうか(この頃、りんごがどんどん美味しくなっていますよね)。生まれた場所がロンドン郊外、というあたりは大分違ってしまいますが…。

キティーちゃんの誕生と同時にキティーちゃんグッズが次々に売り出され、女の子はみんな夢中になって、一つでもキティーものを手に入れたい、と思っている風でありました。私も、同じクラスでフルートをやっていた親友とのプレゼント交換した時の条件は「何かキティーちゃんのものを」でした。でもあの頃(小学校高学年)、私がもっとも夢中になっていたのは、キティーちゃんならぬ“ショパン”でした。お小遣いやお年玉は楽譜やレコードに消えていきましたが、ちっともいやではありませんでした。他の女の子のように、可愛らしいおしゃれ小物には、さほど興味がなかったのです。

勿論、おしゃれが嫌いだったわけではなく、中学に入るとセーラー服を毎日丁寧に手入れしたり、スカートのプリーツを美しく保つために“寝押し(この言葉、今も生きているんだろうか?要は布団の下に引いて、布団と自分の重みでプレスするのだけど…)”したり、たまに香水つけてみたり(!?)…と、私なりにはこだわっていたのです。でも、やっぱりキティーグッズより音楽グッズのほうがずっと私には価値の高いものでした。

今年の夏他界した大好きな祖母が、そんな私にど〜んと20枚セットのクラシックのレコードを誕生日にプレゼントしてくれたのはその頃でした。今でこそ珍しくありませんが、当時は珍しかった、作曲家ごとに代表的な作品がオムニバスになって収録されているもので、バッハからラヴェル、ストラヴィンスキーにいたるまで、様々な作曲家の作品が網羅されていました。

自分では選ばなかったであろうマーラーの交響曲や、ブラームスのドイツレクイエムなども、そのレコードを通して知ることができて、ピアノだけでなくクラシックの幅広く豊かな世界を体験する切っ掛けになりました。以来、ピアノソロ以外の音楽もピアノ音楽と同じくらい(それ以上に?)興味を持つようになり、大好きになったのですから、そのプレゼントは私にとって、とても大きな影響を与えた貴重なものだったのだ、と、今、改めて感じています。

子供のある時期に、きちんとした本物…質の高い、よいもの…を与えることは、とても大切なことだと思っています。心の栄養にとっても、体の栄養にとっても、です。それは大人が子供たちにしてあげられる限りあることのうち、かなり重要な、大きなことなのではないでしょうか。そこから彼らは沢山のことを感じたり、またその場では何も感じていないかのようであっても、必ず何かの形で彼らの心の中に蓄積され、熟成や昇華を待つことになるのです。

今度の土曜日に、また小学校でのコンサートに出演します。彼らに少しでもよいプレゼントができるように、と、気を引き締めています。

2005年11月03日

« 第260回 左手の親指は大切なのに | 目次 | 第262回 外野のむこう側の声が聞きたい »

Home