第240回 英国:高速飛ばしてゆっくり歩こう ①

5月中旬から、両親と一緒にイングランドとスコットランドに行ってきました。…というと、「あら、親孝行旅行ね」と世間は思ってくださるようですが、実際には初体験満載のアドベンチャートリップで、ゆっくり両親に町を案内する、というよりは彼らを振り回してしまったような感じになってしまいました。

その体験とは、①イングランドからスコットランドまで、レンタカーで移動しよう②湖水地方では車がなければ行けないような、“ホンモノ”のファームハウスに宿泊しよう③旅行客が行かないようなパブに行って、レアな地ビールやシングルモルトを飲んでみよう④現地でしか食べられない“珍味”を味わおう、などなど。本当はさらに⑤ロンドンで本場のミュージカルを観よう、があったけど、両親が日没を待たずに(サマータイムだし夜10時近くまで明るい、ということもあるけど…)眠くなってしまうので、これは断念しました。

旅のメンバーがみんな健康であること、食べ物、飲み物(もちろんアルコールも含めて!)に一切好き嫌いがないこと、父に、60代後半にして初めて国際免許を取り、異国をどんどん走るぞ、という意欲があること、などの条件が揃って実現しました。運転は母も私もできますが、異国の地では自信がないのと、もはやオーチマティック車しか運転できなくなっているので(イギリスはマニュアル車の方が圧倒的に多いく、オートマティック車を借りるのは難しい)、必然的に運転は父が頼みの綱となったのです。運転の次に責任重大なナビゲーターは私がすることになりました。

ロンドンから車を手配したマンチェスター空港まではコーチバスという中・長距離バスでリーズナブルに移動。この間、父にはイギリスでの道路の走り方や道路の構造を呑み込んでもらいます。さて、空港についてレンタカーのカウンターを探しますが、ターミナルが違うのか見当たりません。そこで空港内見取り図でまずはインフォメーションのマークを探し、そこに行ってみますが、どんなに探してもそれらしいカウンターがないのです。「おかしいなぁ、この辺にあるはずなのに…」ふと予感がして、柱に組み込まれているコンピューターの画面を覘いてみると、そこに「空港インフォメーション」の文字が…。こりゃぁ一本、とられたわい。このターミナル唯一のインフォメーションが無人とはね。画面にしたがって操作していくと、この場所から目指すレンタカー会社のカウンターまでの道筋がちゃんと示されます。なるほど、これなら英会話に自信のない旅行客にもかえって分かりやすいし、人経費の削減もばっちり。さすがビジネス先進国、英国ね。(でも、きれいなお姉さんにたずねる楽しみがないのは寂しい気も…?)

さて、カウンターにたどり着き、面倒な保険の手続きもすませていざ、パーキングへ。係りのおじさんに一応、確認します。「フォードのフォーカスを借りた者ですが、このままもう、車出していいんですよね?」「ん?ああ、新車のフォーカスね。勿論いいとも。ドアはリモコンキーで開閉できるからね。」と言うと、親指を立ててウインク。車に戻ってみると、荷物も積み終えていない両親が何やら騒いでいます…。「何?どうしたの?」「車の操作が分からなくて…」「何の操作が分からないの?」「いろいろ。日本車とぜんぜん違うんだもの。ワイパーは?ライトは?ウインカーは?」アメ車だから、左ハンドルをそのまま英国用に右につけたようで、結果的に日本車とはワイパーと方向指示器が逆についていることになります。日本で輸入車に乗っているので、私にとっては馴染みの仕様で、幸いライトなどもほぼ同じタイプでした。「これがウインカー、こっちがワイパー。ライトはここで、これで尾灯、本灯はこう…。ハイビームは…、え〜っと、使わないからいいよね」。いそいそと説明してなんとか発進にこぎ着けましたが、内心不安でした。その日宿泊するファームハウスの夕食の時間までに、果たして現地にたどり着けるかどうか…。「遅れるときには連絡を下さい」と言われているけど、携帯もないし、何にもないようなところなのにどうやって連絡を…?人のいないところで道に迷ったらどうしよう?

そして空港を一歩出たとたん、その不安はむくむくと膨れ上がることになったのです。 (英国:高速飛ばしてゆっくり歩こう ②に続く)

2005年06月09日

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