音楽はすべての人のもの
ゾルターン・コダーイ(ハンガリーの作曲家、教育家、民俗音楽研究家、哲学者)
物心ついた時から、どっぷりと西洋音楽…いわゆるクラシック音楽の世界に生きてきたわたし、がわらべうたを愛するようになった二つのきっかけについて、少しお話しさせてください。
ひとつ目はハンガリー留学時代。ブダペストのある高等学校でコンサートをさせていただく機会がありました。その時、プログラムを終えた後、先生から「生徒たちに、あなたの国、日本のうたを教えてくれませんか?」と言われたのです!
その時、自分がきちんと日本のうた(西洋の音階で作られた唱歌や童謡ではなく)を理解していないことや、まともに歌えるものが思いつかないほどそれについて無知だということを知り、愕然としたんです。
「日本人なのに…」情けなさに顔から火が出るほど恥ずかしくなりましたが、めげずにぐっと力を振り絞って、歌詞は途中からでたらめになりつつも『さくらさくら』を歌いました。すると、、、
先生がツーコーラスめで生徒たちをうながし、メロディーをみんなで一緒に歌ってくれたのです。一度聴いただけなのに、とてもきれいな声で…。そして、「私たちの国の歌と似てる気がするわ」と言って日本の歌に心から感動してくれました。感動したのはわたしの方…あとから、彼らは自国のわらべうたをきちんと学んでいるので、こうした外国の歌であってもその特徴をすぐにとらえ、歌うことを楽しめる力が育っているのだと知りました。
ふたつめのきっかけは、やはりハンガリーを3年前に訪れたとき。0歳から3歳までの子どもが通う乳児園、3歳から6歳までの子どもが通う保育園や、小学校での音楽の授業、地域のコミュニティーにおけるわらべうたのサークルなどを視察させてもらい、うたうことをとおして単に音感だけでなく、母語や自国を誇りに思う気持ち、仲間への思いやりの心や協調性を養っている現場に、衝撃!その素晴らしい成果に驚愕しました。
さらに、先生方が日本の民謡をアカペラコーラスで披露してくださいました。その美しかったこと!わたしたちは、西洋の音楽芸術に負けない素晴らしい文化遺産を持っている。いち音楽人として、それをもっと活かして、皆さんの人生を豊かにしていくお手伝いがしたい…そう思うようになったのです。
プロ、もしくはそれに近い大人が作った動揺とは違って、子どもたちの遊びの中から自然にうまれたもの…それがわらべうたです。わらべうたのつくり手は、主に子どもたちということになります。
わらべうたは、誰でもすぐにうたえること、そして美しい日本語に寄り添ったうたです。
・言葉に沿ったリズムをもつ
・楽譜が読めなくてもうたえる
・楽器がなくても練習できる
・声帯の発達していない子どもでも無理なく歌える音域
・自然に発生した“生きた音楽”が学べる
・美しい音程感覚が身につく
・お友達や家族みんなで楽しめる
・手遊びも合わせると、脳のトレーニングにも!
・歌詞から日本の風土の豊かさや伝統行事などが学べる
・仲間同士の一体感が得られる
・ハモってうたうなどアレンジの幅も無限!
・仲間の声を聴きながらうたうことで、音感だけでなく協調性も育める
・日本をもっと深く知ることができる。もっと好きになれる
などなど、メリットは枚挙にいとまがありません。
・子どもたち
・子どもやお孫さんのいる大人の方
・うたうことが好きな方
・毎日を楽しく朗らかに過ごしたい方
・脳を若返らせたい方、脳トレに興味のある方
・同じ趣味をもつ仲間が欲しい方
・日本の文化や民俗について興味のある方
・外国の人に日本らしい文化を伝えたい方、一緒に遊びたい方
・音楽を生涯の楽しみ、人生の支えにしたい方
・美しい音感を身につけたい方
音楽が情操教育に最適であることは昔から語られていますが、うたうことや音楽を触れることは医学的・科学的にも、人間の成長と生命維持にとって非常に有益であることが証明されています。
また、最近では鬱や自律神経など、心と身体のバランスが乱れがちな方が、音楽活動をとおして生きがいと尊厳を取り戻し、症状が回復するという報告も見られるようになっています。
ふるさとに抱かれるような気持ちになる、素朴なわらべうた。
わらべうたは、楽譜が読めなくても、楽器がなくても、どなたにも楽しめる日本が世界に誇る文化遺産とも言えるのではないでしょうか。
皆さんと声をあわせられる日を心待ちにしております。